牛テールでスープと煮込み

1年に１度あるかないかですけど、とびきりの食材で、なりきりのシェフきぶんでお料理するのは、とっておきの楽しみです。おなじみのお肉やさんが「いいテールをとっておきましたよ」と言ってくださったので、週末予定のお客さまに予告までして、準備もおさおさ怠りなく。

まずは、前にも何度かつくって、その澄んだ色のとりこになった「ブランディ風味のスープ」。

切り分けてあるテールをフライパンにサラダ油で焼き色をつけ、油はふき取ってブランディを振りかけます。この肉を鍋にうつし、焼き焦げも水を加えて鍋に入れます。

たっぷりの水と太ネギ、にんじん、タマネギ、セロリ、ローリエを加えて、アクをとりながら1時間半くらい煮たら、テール肉を取り出して、スープは漉しておきます。

タマネギ、セロリ、ニンジンなどのくず野菜を粗みじんにして鍋に入れ、トリひき肉と卵白、つぶした黒粒コショウを加えてよくよく混ぜておき、これに漉したスープを加え約30分煮て、布で漉すと、うそのようにきれいに澄んだスープになります。

sesentaの畑にのこっていたミニミニ小カブを、根もとのほうから先に茹でて色よくしあげ、マッシュルームのスライスを添えて、このきれいなスープを注ぎました。

このスープのお手本、熊谷喜八シェフのレシピではこのスープに、牛のテールと煮たお野菜をいっしょによそうのですけど、ここはきれいなスープだけにして、お肉は別の思惑が。

鍋にオリーブ油を熱して、みじん切りのニンニク、ニンジン、タマネギ、ざく切りのトマトを入れてよく炒め、スープをとったテール肉を入れます。肉のほうは、ずてによく火が通っているので、くずれないように混ぜます。

そこに甘めの白ワインを3カップほど注ぎ、アクをしっかりとって、パセリとローリエを入れて、少し煮たら、火を止めてひと晩ほどおいて、味をなじませます。

つぎの日、乱切りのジャガイモを素揚げして、煮込みの鍋に加え、少し煮れば、肉じゃが風ふうテール煮込みのでき上がり。

この煮込みも、おおつきちひろさんのオリジナルレシピでは、当然牛テールを生から焼いて、煮込んでいくところを、テールの性質上、脂がきつくて年寄り向きでないため、こんな再生法を考えてみました。

スープにダシをとったテールには、まだ旨味も食感も十分残っていてかえってサッパリと、意外にうまくいきました。ひとつの牛テールで、スープと煮込みの両方が楽しめるという、水増し作戦はまずまず成功で、お客さまにもご好評。

それにしても、テールを焼いているフライパンに、ブランディを注いだときの香りは、料理人みょうりに尽きる思いで、虎の子のVSOPを持ち出されて悲鳴を上げていたsesentaも、これにはナットクしたスープでした。