2012年 03月 18日
うぐいすの里 |
山道を行き昏れた旅人が、とある家に一夜の宿を借りたところ、その家にひとり住む若い娘に留守居をしてくれとたのまれ、座敷にある大きいたんすだけは、けっして開けてはなりませんよ、と言いおいて娘は出ていきます。
ところが旅人がいいつけに背いて、そっといちばん上の引き出しの環を引いてみると、そこには村のお正月の風景が広がっていて、小指ほどの小さな村びとが凧上げをしたり羽根つきをしたりしています。
不思議に思いながら、つぎの引き出しをあけると、そこには節分の風景が‥。そして次々に開けた引き出しのなかには、三月、四月、五月‥とその季節の風景と人々があらわれます。
私の好きな昔ばなしで「うぐいすの里」というのでしたか、たんすの引き出しの中に、小さな村があるというのが、なんというかとても絵画的で、そのシーンだけが頭にのこっています。
「見るなの座敷」という題名で語られることもあって、これは「開けてはいけない」といわれたフスマを開けると、次々に12カ月の景色があらわれるのでした。
私たちがいま住んでいる家は、ゆるやかな斜面にあって、へやの窓から、お向かいの農園が一望できます。穏やかな陽がさしている日には、遠くでクワを振るっていらっしゃる姿が、ちょうどジオラマのようで、いっとき、昔ばなしの世界に入ってしまったような気持ちになります。
ことしは2,3日前にはじめてのウグイスを聞いて、梅の花も盛り。梅見の宴というには不似合いですけど、陽射しの温かいへやで外を見ながらのお昼ごはんは、ひよこ豆のカレーでした。
鍋にサラダ油を熱し、シナモンとチリを加えて、みじん切りのタマネギを色づくまで炒めます。
香辛料(ターメリック、コリアンダー、クミン、チリ、ガラムマサラ、黒コショウ)とシヨウガ、ニンニク、ししとうのみじん切りを入れて炒め、ひよこ豆の水煮にしてあったのを煮汁ごと加え、トマトピューレとヨーグルト、塩を加えて煮ます。
赤米入りのごはんと、まるパンの一切れ、野菜スープと、茹でたほうれん草にタマネギドレッシングをかけて。このほうれん草も見えている畝から抜かせてもらって来たばかりという、ランチです。
ところで、うぐいすの里の話の結末をよく憶えていなくて、しらべてもらいましたら、見ないでという約束をやぶった旅人が、気がつけば泊まった家も田畑も消えてなくなり、うぐいすがひと声鳴いて飛び去っていくというものでした。
おだやかな暮らしも風景も、消えてなくなるというところに、人間の開けてしまった「見るなの座敷」が、いまの原子力にあたるのでないようにと祈る気持ちが、ふと湧いてきました。
ところが旅人がいいつけに背いて、そっといちばん上の引き出しの環を引いてみると、そこには村のお正月の風景が広がっていて、小指ほどの小さな村びとが凧上げをしたり羽根つきをしたりしています。

私の好きな昔ばなしで「うぐいすの里」というのでしたか、たんすの引き出しの中に、小さな村があるというのが、なんというかとても絵画的で、そのシーンだけが頭にのこっています。
「見るなの座敷」という題名で語られることもあって、これは「開けてはいけない」といわれたフスマを開けると、次々に12カ月の景色があらわれるのでした。
私たちがいま住んでいる家は、ゆるやかな斜面にあって、へやの窓から、お向かいの農園が一望できます。穏やかな陽がさしている日には、遠くでクワを振るっていらっしゃる姿が、ちょうどジオラマのようで、いっとき、昔ばなしの世界に入ってしまったような気持ちになります。
ことしは2,3日前にはじめてのウグイスを聞いて、梅の花も盛り。梅見の宴というには不似合いですけど、陽射しの温かいへやで外を見ながらのお昼ごはんは、ひよこ豆のカレーでした。
鍋にサラダ油を熱し、シナモンとチリを加えて、みじん切りのタマネギを色づくまで炒めます。
香辛料(ターメリック、コリアンダー、クミン、チリ、ガラムマサラ、黒コショウ)とシヨウガ、ニンニク、ししとうのみじん切りを入れて炒め、ひよこ豆の水煮にしてあったのを煮汁ごと加え、トマトピューレとヨーグルト、塩を加えて煮ます。
赤米入りのごはんと、まるパンの一切れ、野菜スープと、茹でたほうれん草にタマネギドレッシングをかけて。このほうれん草も見えている畝から抜かせてもらって来たばかりという、ランチです。
ところで、うぐいすの里の話の結末をよく憶えていなくて、しらべてもらいましたら、見ないでという約束をやぶった旅人が、気がつけば泊まった家も田畑も消えてなくなり、うぐいすがひと声鳴いて飛び去っていくというものでした。
おだやかな暮らしも風景も、消えてなくなるというところに、人間の開けてしまった「見るなの座敷」が、いまの原子力にあたるのでないようにと祈る気持ちが、ふと湧いてきました。
by sesenta
| 2012-03-18 12:45
| 休みのお昼
|
Comments(15)
続けてのおたよりごめんなさい。昨日は孫二人が泊まりに来てくれて、先ほど帰宅した電話をもらってほっとした昼下がり、一番に開けてみました。
こんな美しい昔ばなしに感動したあまり、またお便りしたくなりました。満開の梅もきれい、梅の向こうにいつもお話の農場があるのですね。夢の里のようです。うちの玄関にも友達が届けてくれた一枝の梅が花開いています。こんなきれいな自然にも、ふと一抹の不安がよぎるのが怖いです。
お豆のカレーもやってみたいです。
こんな美しい昔ばなしに感動したあまり、またお便りしたくなりました。満開の梅もきれい、梅の向こうにいつもお話の農場があるのですね。夢の里のようです。うちの玄関にも友達が届けてくれた一枝の梅が花開いています。こんなきれいな自然にも、ふと一抹の不安がよぎるのが怖いです。
お豆のカレーもやってみたいです。
0
はじめまして・・・お邪魔いたします。
ひょんなことからこのブログを知り、毎日楽しみに拝見させていただいております。
バターを牛乳で溶かして作るバナナケーキはもう何度も作って空で覚えたほどです。
いつもよみ逃げさせていただいているのですが、今回、最後のお言葉が胸にずしん、ときて・・・ついコメント欄開いてしまいました。
上手く言えないのがもどかしいのですが、もっと!もっとと望んだ人間が最後に行きつくところには・・・虚しいですね・・・
ひょんなことからこのブログを知り、毎日楽しみに拝見させていただいております。
バターを牛乳で溶かして作るバナナケーキはもう何度も作って空で覚えたほどです。
いつもよみ逃げさせていただいているのですが、今回、最後のお言葉が胸にずしん、ときて・・・ついコメント欄開いてしまいました。
上手く言えないのがもどかしいのですが、もっと!もっとと望んだ人間が最後に行きつくところには・・・虚しいですね・・・
この頃里山や本来の日本の田園風景がよくTVで見られて、
引き出しのお話は日本人ならほぼ皆懐かしいと思われる景色が目に浮かぶようです。
この自然の一部である人間が次代に美しいままで引き継がなければ
と感じるこの頃、危うさに不安がよぎります。
引き出しのお話は日本人ならほぼ皆懐かしいと思われる景色が目に浮かぶようです。
この自然の一部である人間が次代に美しいままで引き継がなければ
と感じるこの頃、危うさに不安がよぎります。

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

題名は忘れましたが、似たようなお話に次のような昔話があります。
「ある日、おじいさんが
海で釣った大きな魚を海に逃がしてやると、
その魚が「なんでも望みをかなえましょう」と言います。
おじいさんは「小さくてもいいから家がほしい」とねだりますと、
帰ってみると、掘立小屋はこぎれいな家になっていました。
慾深いおばあさんは
「もっと大きな家、もっともっと大きな家をくれと魚に言ってこい」とおじいさんにいいます。
家はだんだん立派になっていきますが、人間の慾は果てしがないものですね。
最後には「立派な御殿をたててくれ」
とおじいさんはおばあさんに言わせられたものですから、
魚に「御殿をくれー」と言ってしまいます。
するとーーー家へ帰ると・・・もとの掘立小屋になっていましたとさ」
なんか、もうこのお話の最後のとこにきているようですね。今の世の中。
「ある日、おじいさんが
海で釣った大きな魚を海に逃がしてやると、
その魚が「なんでも望みをかなえましょう」と言います。
おじいさんは「小さくてもいいから家がほしい」とねだりますと、
帰ってみると、掘立小屋はこぎれいな家になっていました。
慾深いおばあさんは
「もっと大きな家、もっともっと大きな家をくれと魚に言ってこい」とおじいさんにいいます。
家はだんだん立派になっていきますが、人間の慾は果てしがないものですね。
最後には「立派な御殿をたててくれ」
とおじいさんはおばあさんに言わせられたものですから、
魚に「御殿をくれー」と言ってしまいます。
するとーーー家へ帰ると・・・もとの掘立小屋になっていましたとさ」
なんか、もうこのお話の最後のとこにきているようですね。今の世の中。
はじめまして、いつも楽しく拝見させていただいています。
農園と梅を楽しみながらの食卓、光の色合いや梅の香りが想像できて、うっとりしました。
この100年間に人間がいかに激しく自然を壊してしまったことか。それを知っていても、物にあふれ便利さが当然のような現在の生活を改められない自分自身を振り返り、ときに愕然とします。
お話のように、気がついてみたら周囲から美しい自然が消えていた、「もとの掘っ建て小屋」だけが残った、というような事態になる前に小さな努力だけでもしたいと願いつつ。
農園と梅を楽しみながらの食卓、光の色合いや梅の香りが想像できて、うっとりしました。
この100年間に人間がいかに激しく自然を壊してしまったことか。それを知っていても、物にあふれ便利さが当然のような現在の生活を改められない自分自身を振り返り、ときに愕然とします。
お話のように、気がついてみたら周囲から美しい自然が消えていた、「もとの掘っ建て小屋」だけが残った、というような事態になる前に小さな努力だけでもしたいと願いつつ。
自然との約束をつぎつぎに破ってきたニンゲン。
そんなニンゲンどもを、穏やかな笑顔でこれまでは許してきてくれた自然。
でも、もう、これ以上はダメだと思います。
だからみんなで立ち止まりたいのに、勢いがついていてなかなか止まれない。
それでも、気づいて立ち止まる人が増えれば、何とかなるかもしれません。
こちらのブログのような、静かな、そして確かな声が、広く広くつたわっていきますように。
うつくしいお話を、ありがとうございました。
そんなニンゲンどもを、穏やかな笑顔でこれまでは許してきてくれた自然。
でも、もう、これ以上はダメだと思います。
だからみんなで立ち止まりたいのに、勢いがついていてなかなか止まれない。
それでも、気づいて立ち止まる人が増えれば、何とかなるかもしれません。
こちらのブログのような、静かな、そして確かな声が、広く広くつたわっていきますように。
うつくしいお話を、ありがとうございました。
たんすの引き出しの中から四季の風景が次々と・・・
その光景を想像しながら美しい絵を思い描いていましたが、
最後は、今の世の中を暗示しているようなお話ですね。
でも、次世代の人たちのために、一人ひとりが考えて行動すれば
大きな力になると信じています。
美味しそうなご馳走に添えられた一枝の梅の花
カレーとは一味違った優しいスパイスになっていてステキです♪
その光景を想像しながら美しい絵を思い描いていましたが、
最後は、今の世の中を暗示しているようなお話ですね。
でも、次世代の人たちのために、一人ひとりが考えて行動すれば
大きな力になると信じています。
美味しそうなご馳走に添えられた一枝の梅の花
カレーとは一味違った優しいスパイスになっていてステキです♪
こちらでは雪が消えても田畑に作付けできないところがたくさんあります。
それでも梅も桜も咲き、鳥は囀り、いつもと変わらぬように春が訪れるでしょう。
こんなに美しいところを汚してしまったことに、なんとしたらよいのか・・・。
ひよこ豆のカレーがとても美味しそう。やさしい味わいなのでしょうね。
それでも梅も桜も咲き、鳥は囀り、いつもと変わらぬように春が訪れるでしょう。
こんなに美しいところを汚してしまったことに、なんとしたらよいのか・・・。
ひよこ豆のカレーがとても美味しそう。やさしい味わいなのでしょうね。
昨日のお昼のメニュー、うちも同じくひよこ豆のカレーに平パン、サラダでした。
ブログを書いてる途中こちらの記事を夫に教えてもらったのですが
読み応えのある内容に「同じメニューでもずいぶん違う・・・」言われ
恥ずかしげもなくリンクまでさせて頂きました。
ありがとうございます(*^-^*)
ブログを書いてる途中こちらの記事を夫に教えてもらったのですが
読み応えのある内容に「同じメニューでもずいぶん違う・・・」言われ
恥ずかしげもなくリンクまでさせて頂きました。
ありがとうございます(*^-^*)

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

何時もながら 日本の原型が此処にはあるように 思えて懐かしい思い出みています 開けたては いけないと言われると 開けてしまう 一度あけると 次々と 開けてしまう 時代は目まぐるしく変化していきます いい事ばかりではなく そんなことに関係なく此処にはほんとに 素適な日本があります まだまだ寒い日もあります お体お大事にしてくださいね

ひよこ豆のカレー…香辛料がすごいですっ(^_^)
おいしーんだろなー(^_^)
おいしーんだろなー(^_^)

よくぞおっしゃって下さいました.
多くの読者を持つフードブログが, 放射能で汚染された食べ物を極力取らない事, 瓦礫受け入れに反対し食の安全を守り, 故郷の美しい土地を汚染から守りましょうと, 読者に訴えて下さると, 多くの尊い命が救われます.
この瞬間にも, 何も知らない若いお母さん方が危険な食べ物を子供達に与え, 知らずにその小さい貴い命を傷つけていると思うと切ないです.
311以前には, もう戻らないのですから, 個人が自覚して命を守っていかないと. あれから一年, もうきれいごとではすまない所まで来てしまいました.
一般に知られていない被曝による脳の症状に, 感情の鈍化. 危機感の大きな減退. 不安感の欠如, 短期長期記憶力の減退. 一時健忘. 他人の感覚への共感の減退 等々.
恐ろしい事に, 何より体調の悪い事に脳が気づかない.
今後, 食物での防衛をしなければ, 皮質全体と脳幹の抑制が進み,
突然死が増えます. 東京含む高度汚染地域では, 甲状腺機能低下が始まっており, 脳の抑制で強い欝からブラブラ病への移行期も起き始めています. 木下黄太のブログ コメントより抜粋
京都でも瓦礫の受け入れが始まると聞きました. どうぞご自愛下さい.
多くの読者を持つフードブログが, 放射能で汚染された食べ物を極力取らない事, 瓦礫受け入れに反対し食の安全を守り, 故郷の美しい土地を汚染から守りましょうと, 読者に訴えて下さると, 多くの尊い命が救われます.
この瞬間にも, 何も知らない若いお母さん方が危険な食べ物を子供達に与え, 知らずにその小さい貴い命を傷つけていると思うと切ないです.
311以前には, もう戻らないのですから, 個人が自覚して命を守っていかないと. あれから一年, もうきれいごとではすまない所まで来てしまいました.
一般に知られていない被曝による脳の症状に, 感情の鈍化. 危機感の大きな減退. 不安感の欠如, 短期長期記憶力の減退. 一時健忘. 他人の感覚への共感の減退 等々.
恐ろしい事に, 何より体調の悪い事に脳が気づかない.
今後, 食物での防衛をしなければ, 皮質全体と脳幹の抑制が進み,
突然死が増えます. 東京含む高度汚染地域では, 甲状腺機能低下が始まっており, 脳の抑制で強い欝からブラブラ病への移行期も起き始めています. 木下黄太のブログ コメントより抜粋
京都でも瓦礫の受け入れが始まると聞きました. どうぞご自愛下さい.