うちの栗鹿の子

秋の日は釣瓶落とし、といわれる通り、まだ明るいうちにちょっとひとりで用達しに出て、とんぼ返りしてきたら、もうまっ暗。山道を下って、ゴロすけがいっしょにお迎えに来てくれていて、半分のお月さまを見ながら、戻ってきました。

ついこの間まで、夜になっても蝉の声がしていたのに、いまはあたりいちめん秋の虫でいっぱいです。夜中、ベッドに入っていると、頭の上の屋根でコツンと音がして、それがコロコロコロと転がって、やがてポトン、と土の上へ。

ことしは、なぜか栗の実の育つのが早くて、もう朝になるとあたりかまわずコロンとかわいい茶色の実が転がっています。甘露煮や渋皮煮にするような、大きくて立派な栗ではなく、うちのは山栗(柴栗)なので、5,6個でようやくふつうの栗１粒ぶんくらい。

それだけに、皮をむいたり、渋皮をとったりがめんどうで、昨年は渋皮ごとごはんに入れて炊くことを覚えて、これはけっこううまくいったので、ことしも最盛期を待ってもう一度、とねらっているところ。

この時季、毎朝栗の木のまわりをひと回りしては、エプロンのポケットに一杯ぶんくらい拾って、ひと袋できただけ、農園のご近所さんにもらっていただきます。

残ったぶんをうちに持って入って、すぐに茹でて今日のお茶うけに。

きのう、甘いもの代わりに小豆をすこし、控えめのお砂糖で煮ておいたのを出してきたら、こんなおやつができました。柴栗は皮をむくのが手間なので、茹でたのをペティナイフで半分に切り、スプーンで実をこそげます。このときには、グレープフルーツ用のギザギザスプーンを使うと、うんと能率的。

茹であずきの上に、この栗をのせて、これでわが家の栗鹿の子になりました。もちろんお菓子屋さんのものとは較べものにならないただの茹であずき風ですけど、よぶんな甘みをつけていないので、小豆と栗のやさしい風味もそのままの、天然栗鹿の子です。