スモークトサーモンとべーグル

べーグルを焼きました。私のべーグルは、お店のように長い生地をドーナツ型につなげるのでなく、丸めたまん中にえいやっと穴を開けて、ぐるぐるまわしながら広げる作り方なので、いつもこんなふうにぽんぽこりんです。しかも、全粒粉にライフラワーなどいろいろ混ぜものをするので、お肌もぼこぼこ。見場のわるいところは、ごかんべんください。

私がはじめてべーグルを焼いたのは、あのスタッフトターキーを教えてくださったジョージさんが、カナダのおみやげにスモークトサーモンをくださって、「べーグルと食べるのがいちばん」とおっしゃったのが、きっかけでした。

まだ、街にべーグルショップのなかった頃で、本を探して、作ってはシッパイのくり返し。なんとか形になって、あるときジョージさんのお友だちが見えたときに、向こう見ずにも作ってお出ししたら、その方がたまたまユダヤ系の方で、「母親の味を思い出しました」と言ってくださったときには、お心づかいのひと言とはわかっても、とてもうれしかった思い出です。

そんな思いのべーグル、こんど焼いたのも、やはりサーモンがあったからで、この鮮やかな色のサーモンは、ご存じの方もたくさんいらっしゃる、あの湘南のブランドの銘品です。
たくさんの方が、この季節を楽しみにお待ちになっている、稀少品なのですけど、うれしいことに味あわせていただくことができました。

大切に、うすーくうすーくスライスしたサーモンを、玉ねぎやレモンといっしょに口に運ぶと、遠い国のお友だちを思い出すような、汐の香りがします。

粉ふきジャガイモと玉ねぎをピクルスの酢で和えたのと、ペストジェノベーゼをまぜて焼いた玉子焼きを添えました。

朝ごはんには、カマのまわりの身をほぐして、やはりジェノベーゼ入りの玉子焼きに。サラダも含めて、このひと皿の中で、お味はサーモンのお塩味だけ。まことにほどよい味かげんに、舌も大満足でした。カブのスープも、ちょっとのバターの味だけで、カイエンヌ・ペッパーひと振りがアクセント。

このすばらしいサーモン、冬じゅう楽しませていただきます。